〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木と花

「紅苜蓿  <11>(おわり)」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <11> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- [函館歌壇]文学仲間との交流 ❓啄木クイズ 〈 〉 内から答えを一つ選んでください。 明治39年に函館で誕生した文学結社である苜蓿社の雑誌の名は①〈白苜蓿・青苜蓿・紅苜蓿〉である。啄木は苜蓿社…

「紅苜蓿  <10>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <10> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 啄木から函館に行きたいという話があったとき、苜蓿社の面々は「鶏舎に孔雀が舞い込むようなものだ」と言い合って、心から歓迎した。 啄木の処女詩集『あこがれ』は、東京市長・尾崎行雄に献じられ…

「紅苜蓿  <9>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <9> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 苜蓿社(ぼくしゅくしゃ) 1906年(明39)10月頃に函館で誕生した文学結社。雑誌『紅苜蓿(べにまごやし)』(第一冊~第七冊)を1907年1月より発刊。第八刷は編集済みであったが、同年8月に起こっ…

「紅苜蓿  <8>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <8> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 恋人の来るのでも待つ様に待って居た啄木を青柳町の苜蓿社に迎えたのは五月五日(明治40年)であった。丸刈の頭、端麗な細面、少しおでこの額の下にははしこそうな眼が閃いて居た。不揃えな歯並と八…

「紅苜蓿  <7>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <7> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 啄木は創刊号の発行に際し、蕗堂に請われるまま、長詩「公孫樹」と「かりがね」「雪の夜」の三篇の作品を書き送り、雑誌を飾った。これは、蕗堂が『明星』に投稿していた関係で啄木に依頼したもので…

「紅苜蓿  <6>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <6> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 潮かをる北の浜辺の 砂山のかの浜薔薇よ 今年も咲けるや (浜薔薇 = はまなす) 啄木は「紅苜蓿」に健筆をふるうかたわら、毎日のように大森浜を散策し、人知れず漂泊の涙を流し、わが見る「生命の…

「紅苜蓿  <5>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <5> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 啄木を函館に呼んでくれた『紅苜蓿』の友人達は、みな純情ないい青年ばかりであった。「石をもて追はるゝ如くふるさとを出て」来た啄木にとって、この清らかな新しい友情は、彼の旅愁に閉された胸を…

「紅苜蓿  <4>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <4> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 啄木は函館へ着くとすぐ青柳町四十五番地の苜蓿社に落ち着くことになりましたが、そのままそこで二か月ほどの間厄介になっておりました。 啄木は座談の優れて面白い人で、親しみのあるお国なまりで…

「紅苜蓿  <3>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <3> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 僅か四か月間ばかりの函館生活の中で、啄木の職業は点点とかわった。『紅苜蓿』の主筆とはいえそこからの収入はなく、苜蓿社同人沢田天峯の世話による函館商工会議所臨時雇員となったが、これは二十…

「紅苜蓿  <2>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

紅苜蓿 <2> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 北海道と啄木を結ぶ直接の機縁となった苜蓿社は、函館における短歌研究の会であった野薔薇会の同人並木翡翠(武雄)・松岡蕗堂(政之助)・岩崎白鯨(正)・吉野白村(章三)らが、文芸雑誌刊行の目…

「紅苜蓿  <1>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

『紅苜蓿(れつどくろばあ)<1>』 -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 紅苜蓿(べにまごやし→れつどくろばあ) 石川啄木が寄稿し 後に編集もした「苜蓿社」の雑誌名 うまごやしヨーロッパ原産のマメ科の一、二年草。肥料・牧草にするので、馬肥の…

「啄木と花」 力なき眼に愛でしチユリツプ!

チューリップ 真生(SHINSEI)2021年 no.314 「石川啄木と花」 近藤典彦 最終回 チューリップ 起きてみて、 また直ぐ寝たくなる時の 力なき眼に愛でしチユリツプ! (愛でし=めでし) 作歌は1911年(明治44)6月中旬。初出「新日本」(明治44年7月号)。『…

六歳の日の恋…… 石川啄木

ポピー 折々のことば:2033 鷲田清一 大形(おほがた)の被布(ひふ)の模様の赤き花 今も目に見ゆ 六歳(むつ)の日の恋 (石川啄木) ◇ 被布とは、防寒のため着物の上にまとう襟元が四角の衣。 恋のターゲットは「あの人」、つまりひとりの人格と思わ…

「林檎  <6>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料- (おわり)

林檎<6>-啄木の歌に登場する花や木についての資料- 林檎 石狩の都の外の 君が家 林檎の花の散りてやあらむ やがてその年の瀬も暮れて、明けて正月六日の朝に、待ちに待った智恵子からの封書を手にする。封を切るのももどかしく、一気に読み下した啄木は、…

「林檎  <5>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

林檎<5>-啄木の歌に登場する花や木についての資料- 林檎 石狩の都の外の 君が家 林檎の花の散りてやあらむ 「石狩の都」(石狩平野の「都」は札幌)の郊外、「君が家」、「林檎の花」。土地と花とそこに住む女性。美しい地名と花とが相乗して、「君」とそ…

「林檎  <4>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

林檎<4>-啄木の歌に登場する花や木についての資料- 林檎 石狩の都の外の 君が家 林檎の花の散りてやあらむ 札幌市東区・橘家庭園の「林檎の碑」<碑陰> 札幌村元村の林檎は橘仁が此地に定住し苗木を植付せる時より始まる 仁は明治十七年春 苗木妻戸籍を…

「林檎  <3>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

林檎<3>-啄木の歌に登場する花や木についての資料- 林檎 石狩の都の外の 君が家 林檎の花の散りてやあらむ 弥生小学校に在職当時さきに述べたように現実のその女性をまのあたりにして寄せた恋情にはもちろん深切なものがあったに違いないが、すでに妻子の…

「林檎  <2>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

林檎<2> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 林檎 石狩の都の外の 君が家 林檎の花の散りてやあらむ 札幌の大きな林檎園の娘で弥生小学校の同僚教員であった橘智恵子に捧げた「忘れがたき人々 二」から。小奴の場合とちがって、こちらのほうは官能…

「林檎  <1>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

林檎<1> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 林檎 石狩の都の外の 君が家 林檎の花の散りてやあらむ 初出「文章世界」明治43年11月号 札幌郊外のあなたの家では林檎の白い花が散っているであろうか。 橘智恵子の実家は北海道札幌村にあった。父は…

「啄木と花」 大根の花白きゆふぐれ

真生(SHINSEI)2020年 no.313 「石川啄木と花」 近藤典彦 第十六回 大根の花 宗次郎に おかねが泣きて口説き居り 大根の花白きゆふぐれ (宗次郎=そうじろ)(口説き居り=くどきをり) 作歌は1910年(明治43)10月中旬。初出は「スバル」(明治43年11月号…

「啄木と花」 花散れば 先づ人さきに白の服

サクラ 真生(SHINSEI)2020年 no.312 「石川啄木と花」 近藤典彦 第十五回 桜の花 花散れば 先づ人さきに白の服着て家出づる 我にてありしか (出づる=いづる) 作歌は1910年(明治43)10月中旬。初出は「スバル」(明治43年11月号)。『一握の砂』(明治4…

「ダリア <4>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料- (おわり)

ダリア<4> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- ダリア 放たれし女のごとく、 わが妻の振舞ふ日なり。 ダリヤを見入る。 「放たれし女」とは、束縛から解放されて自由になった女、の意となります。当時の女性にとって束縛の最たるものは「家」の制…

「ダリア <3>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

ダリア<3> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- ダリア 放たれし女のごとく、 わが妻の振舞ふ日なり。 ダリヤを見入る。 「ダリヤ」の華麗なイメージが、「放たれ」、「振舞ふ」、躍動することばと映し合い、夫の妻への微かな関心が暗示される。あ…

「ダリア <2>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

ダリア<2> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- ダリア 放たれし女のごとく、 わが妻の振舞ふ日なり。 ダリヤを見入る。 ふれあわない夫婦の感情の齟齬をよんだ一首。寄り添わない気持を抱いて振舞う妻と、それを意識にもちながら黙々とダリヤの花…

「ダリア <1>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

ダリア<1> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- ダリア 放たれし女のごとく、 わが妻の振舞ふ日なり。 ダリヤを見入る。 初出「悲しき玩具」 いかにも追放された女のように私の妻が悲しげに振舞う日である。私は心さびしくダリアを見つめるのである…

「トウモロコシ=玉蜀黍 <3>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料- (おわり)

玉蜀黍<3> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 玉蜀黍 しんとして幅広き街の 秋の夜の 玉蜀黍の焼くるにほひよ 石川啄木・その短歌と「におい」天野慈朗 ・「におい」が連想される言葉が使われている102首の短歌についてだけに限定。・最も多く用…

「トウモロコシ=玉蜀黍 <2>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

玉蜀黍<2> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 玉蜀黍 しんとして幅広き街の 秋の夜の 玉蜀黍の焼くるにほひよ 宮崎郁雨「歌集『一握の砂』を讀む」 札幌の街の空氣がよくうつし出されてゐる。『しんとして幅廣き街』の一句で札幌の全体を云ひ盡し…

「トウモロコシ=玉蜀黍 <1>」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

玉蜀黍<1> -啄木の歌に登場する花や木についての資料- 玉蜀黍 しんとして幅広き街の 秋の夜の 玉蜀黍の焼くるにほひよ 初出「一握の砂」 しんと静まりかえった札幌の幅広い街の秋の夜の、玉蜀黍の焼けるにおいよ。 初出は歌集『一握の砂』。 区画整然とし…

「ツツジ=躑躅」-啄木の歌に登場する花や木についての資料-

-啄木の歌に登場する花や木についての資料- 躑躅 わが庭の白き躑躅を 薄月の夜に 折りゆきしことな忘れそ 初出「一握の砂」 私の庭の白いつつじを、おぼろ月夜に折っていったことを決して忘れなさいますな。 初出は歌集「一握の砂」。宝徳寺の裏庭での上野さ…

「啄木と花」 白き蓮沼に咲くごとく

ハス 真生(SHINSEI)2019年 no.311 「石川啄木と花」 近藤典彦 第十四回 白蓮 白き蓮沼に咲くごとく かなしみが 酔ひのあひだにはつきりと浮く 作歌は1910年(明治43)8月8日。初出は東京毎日新聞(明治43年8月31日)「何にもかも」(五首)の一首。『一握…