〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木と花」 力なき眼に愛でしチユリツプ!

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チューリップ

真生(SHINSEI)2021年 no.314

石川啄木と花」 近藤典彦


  最終回 チューリップ

  起きてみて、
  また直ぐ寝たくなる時の
  力なき眼に愛でしチユリツプ!

         (愛でし=めでし)

 

 作歌は1911年(明治44)6月中旬。初出「新日本」(明治44年7月号)。『悲しき玩具』(明治45年6月刊)所収。

この歌を鑑賞するには、すこし予備知識が必要です。

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左下の写真(黄色の部分)は、1911年2月27日の啄木日記。読みやすく達筆な啄木の字がいたずら書きのようにのたくっています。こんな字しか書けない高熱下でも日記を書きつづける石川啄木という人の文学者魂に驚嘆します。



 

 掲出歌の言葉を読む準備がととのったようです。

 

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【解釈】蒲団の上に起き上がってみた。すぐにまた横になりたくなった。その時高熱で潤んだ目に映ったのはチューリップ、心惹かれる色と美しさにしばし病を忘れたあの赤いチューリップ!

  • 掲出歌を鑑賞して歌の中からはげしい感動が押し寄せました。そして思いました。啄木のように花を愛し、花から力をもらった文学者・思想家がかつてあっただろうか、と。
  • これはこのシリーズを終えるにあたって、全十七回を顧みての感想でもあります。

 

<真生流機関誌「真生(SHINSEI)」2021年 no.314 季刊>(華道の流派)

 

*このシリーズは今回が最終回ですが、「続編シリーズ」が続くことになったそうです。