〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

映画 読書

『この世界の片隅に』を生んだ〈こうの史代〉の大原画展 佐倉市立美術館 <2>(おわり)

佐倉市立美術館 こうの史代の初大原画展「漫画家生活30周年 こうの史代展」 『百一 hyakuichi』 下書き 作者のこうの史代さんは、関係の方々と何度も打ち合わせをして、美術館にも出向いてこの展覧会を作ってくださったそうだ。 会場の床にはテープで、細か…

『この世界の片隅に』を生んだ〈こうの史代〉の大原画展 佐倉市立美術館 <1>

佐倉市立美術館 こうの史代の初大原画展「漫画家生活30周年 こうの史代展」 「鳥がとび、ウサギもはねて、花ゆれて、走ってこけて、長い道のり」 佐倉市立美術館 美術館は、城下町千葉県佐倉市の中心にある。 鉄筋コンクリート造で、地下2階、地上5階の建物…

「泣いたらお父さんが心配されると思つて 涙をこらへた」ハンセン病の子どもの患者

新聞書評 2025年3月9日 河北新報 著者 山下多恵子 国際啄木学会理事。日本ペンクラブ会員。日本近代文学会会員。著書『海の蠍』『忘れな草』『裸足の女』『啄木と郁雨』『あふれる』『かなしき時は君を思へり』 他 表紙 〈 あとがき 〉より ・塔和子という詩…

人はなぜ歌い なぜ書き なぜ生きるのか

『さびしさを紡ぐ ハンセン病を生きるということ』 著者 山下多恵子 出版社 未知谷 新聞書評 ・西日本新聞 ・岩手日報 ・新潟日報 西日本新聞 2024-11-02 読書館 カリスマ店員の激オシ本 岩手日報 2024-11-24 郷土の本棚 詩や短歌 残した思い 新潟日報 2024-…

第十三回 石川啄木 <一握の寸借>『文豪春秋』

『文豪春秋』 著者 ドリヤス工場 目次 太宰治、中原中也、川端康成・・・石川啄木 石川啄木は 明治19年 岩手県に生まれ 県立盛岡中学 在学中に 文学を志す そんなら何故この日記をローマ字で書くことにしたか? 何故だ? Yo wa Sai wo aisiteru;aisiteru kar…

『グアテマラの弟』『わたしのマトカ』を読んで

『グアテマラの弟』片桐はいり 著 幻冬舎 出版 題名を見て『グアテマラの「男」』だと勘違いした。ガタイのいい「男」を想像したりして……。 「弟」だった。しかも片桐はいりさんの「実の弟」だった。 幼い頃の弟を描写し、グアテマラにどっしりと根を張った…

📕 ㊗️ 新刊発行!『さびしさを紡ぐ』山下多恵子 著

『さびしさを紡ぐ ハンセン病を生きるということ』 著者 山下多恵子 出版社 未知谷 表紙 はじめに 二〇〇七年秋から翌年の春にかけて、NHK文化センター盛岡教室で、ハンセン病文学の講座を持たせていただきました。本書はそこでお話ししたことの一部をま…

新刊!『美しい記憶 芝木好子アンソロジー』 作品世界は とびきり面白い

カバー(表) 『美しい記憶 芝木好子アンソロジー』 芝木 好子(著者)、山下 多恵子(編者) はじめに 編者より 芝木好子(1914〜1991)は、1942年27歳のとき「青果の市」により芥川賞を受賞。以後77歳で亡くなるまで、真面目にひたむきに書き続けた。小説…

『句集 偶詠』ご希望の方 どうぞ

(帯) 著者自選十二句 錦が丘在住・小木田さん 俳句歴30年分の思いを一冊に 「分かりやすく余韻残る」350点収録 横浜市港北区内在住で、俳句団体の代表も務める小木田久富さん(77)が、俳句人生約30年の中から選りすぐりの作品を収録した『句集 偶詠』(鋭文…

「ふるさと」それは私の心 詩歌の原点 『句集 偶詠』

ジャケット 小木田久富 著『句集 偶詠』紹介 明るい明るい青に薄い白雲のかかったジャケット ゆっくり開くと温かみのある濃い藍色の表紙 『偶詠』 小木田 久富 著 発行所 鋭文社 (帯) 著者自選十二句 「啄木の息」管理者の好きな句 流星や天界の子のすべり…

 「ふるさとの山に向ひて」 それぞれのふるさとの山を思う

[カエデ] 『ふるさとの風の中には ―詩人の風景を歩く』 ・俵 万智 著 河出書房新社 ・1992年発行 1500円 「ふるさとの山に向いて」 石川啄木 ふるさとの訛なつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きにゆくこの歌は、岩手県で生まれた石川啄木が、東京で作った…

 直木賞『銀河鉄道の父』に出てくる石川啄木

[カモメ] 第158回直木賞 受賞作 『銀河鉄道の父』 著者 門井慶喜 講談社 7 あめゆじゅ 小学生のころは、教室で、担任の八木先生にエクトール・マロ『家なき子』を読んでもらって感動した。感動のあまり自分でも話をこしらえて寝る前にトシに聞かせたりした。…

 映画『苦い銭』「はたらけど はたらけど猶わが生活…」

[キヅタ] 新作ドキュメンタリー映画ワン・ビン監督 『苦い銭』 ◎ヴェネチア国際映画祭 脚本賞受賞 & ヒューマンライツ賞 受賞 中国の巨匠、ワン・ビン監督作品 故郷を離れ彼らは言う「苦い銭を稼ぎにいくんだ」。 出稼ぎ労働者が8割を占める街、中国の浙江…

 啄木を歌う “弱さをいつわらず歌うには強さが要る…” 谷川俊太郎

[ナンテンハギ] ◯『手紙』谷川俊太郎 集英社発行 石川啄木 涙をこぼれるがままにしておくには 勇気が要る 弱さをいつわらず歌うには 強さが要る でたらめと嘘 裏切りと虚栄 その矛盾と混沌のさなかに ひとつの声が起ち上る さながら悲鳴のように時代を貫き …

 共感と驚異「いたく錆びしピストル出でぬ 砂山の…」啄木

[タイマツバナ] 〇『明解国語総合』 三省堂 2010年 読書の森へ「麦わら帽子のへこみ」 穂村弘 短歌が人を感動させるために必要な要素のうちで、大きなものが二つあると思う。それは共感と驚異である。共感とはシンパシーの感覚。「そういうことってある」「…

 新刊『朝の随想 あふれる』啄木に会いに…

[『朝の随想 あふれる』(カバー写真:著者 右端、微かに消えかかる山は「利尻富士」)] 『朝の随想 あふれる』 山下多恵子 著 未知谷2012年4月から9月まで半年間、週一回、NHK新潟ラジオ「朝の随想」で話した原稿を集めたもの。 「語る」ように書き、「聞く…

新刊寸評『海の蠍 明石海人と島比呂志』

◎新刊寸評 増補新版『海の蠍(さそり) 明石海人と島比呂志』山下多恵子 著 明石海人(1901〜1939年)と島比呂志(1918〜2003年)、2人の作家の共通点はハンセン病。2人が全身全霊で伝えた言葉と壮絶な人生を紹介している。 明石の時代、ハンセン病は「不治…

新刊!『海の蠍(さそり) 明石海人と島比呂志』

新刊『増補新版 海の蠍(さそり) 明石海人と島比呂志 ハンセン病文学の系譜』 山下多恵子 著 未知谷 2017年1月発行 2500円+税 はじめに 明石海人と島比呂志──本書において私は、彼らの生きた姿と残された言葉をたどりながら、生きることと書くこと(歌うこ…

「地雷ではなく花をください」

「地雷ではなく花をください」 「続・地雷ではなく花をください」 「続々・地雷ではなく花をください」 絵・葉 祥明 文・柳瀬房子 自由国民社 かけがえのない地球をつくりましょう かけがえのない地球を残すため 地雷ではなく 花をください 地雷ではなく 花…

啄木ゆかりの「『渋民』の名を残していれば、もっと…」

[ボーイング737機内 照明] 《作品に登場する啄木》 『全国アホ・バカ分布考―はるかなる言葉の旅路』 松本修 新潮文庫 平成20年 素晴らしき方言 次の日、日沢君のご両親に車で盛岡まで送ってもらった。岩手県は四国全体の八割にも達する広さで、しかも山あい…

読み出したら止まらない 愛のシンフォニー『オリーブの樹』

[『オリーブの樹』] 廃れゆく塩田と女性の悲哀、重ねて 台湾のベストセラー小説『明月(クリスタルムーン)』(桜出版)の著者、蔡素芬(ツァイスーフェン)が来日した。『明月』は、激動する戦後の台湾社会を生き抜く男女の愛情や家族の絆を骨太に描いた。 …

藤沢周平 - 4 <「ふるさとの かの路傍のすて石よ…」啄木の歌を思い出させる村道一本> (おわり)

[イヌタデ] 《作品に登場する啄木》 『ふるさとへ廻る六部は』 藤沢周平 新潮文庫 平成20年 ◉変貌する村 自動車道 村の胃ぶくろは大きくて丈夫で、たいていの変化は時間をかけさえすればゆっくりと消化して自分のものにしてしてしまう。十年ほど前から取沙汰…

藤沢周平 - 3 <啄木の短歌がなぜ人びとに好まれるのか、その理由に突きあたった>

[敷石] 《作品に登場する啄木》 『ふるさとへ廻る六部は』 藤沢周平 新潮文庫 平成20年 ◉啄木展 記憶がうすれてしまったが、東京・武蔵野市吉祥寺のT百貨店で、石川啄木展がひらかれるということを、私は多分取っている東京新聞で知ったのだと思う。啄木展の…

藤沢周平 - 2 <啄木は、大人過ぎるほどの大人だった>

[ツリバナマユミ] 《作品に登場する啄木》 『ふるさとへ廻る六部は』 藤沢周平 新潮文庫 平成20年 ◉岩手夢幻紀行(つづき) ×月×日 車はやがて花巻 I・C を降り、東北新幹線寄りの小高い丘、胡四王山に建つ宮澤賢治記念館に着いた。 それはすばらしい記念館…

藤沢周平 - 1 <教壇の上に袴姿の啄木が見えた>

[ガラス障子] 《作品に登場する啄木》 『ふるさとへ廻る六部は』 藤沢周平 新潮文庫 平成20年 ◉岩手夢幻紀行 ×月×日 およそ三時間で盛岡に着いた。 今日の日程は、ホテルに荷物をおいて日のあるうちに啄木の故郷渋民村に行って来ることである。 車は台地から…

『鉄くず拾いの物語』ボスニア・ヘルツェゴビナの映画

[ガラス模様] 『鉄くず拾いの物語』Epizoda u životu berača željeza 監督 ダニス・タノヴィッチ 出演 ナジフ・ムジチ セナダ・アリマノヴィッチ 2013年 ボスニア・ヘルツェゴビナ フランス スロベニア ボスニア・ヘルツェゴビナの映画。 小さな村に住むロマ…

とうかいのう、小島のう、磯のう、『津軽』太宰 治

[ハクモクレン] 《作品に登場する啄木》 『津軽』 太宰 治 岩波文庫 2004年 三 外ヶ浜 「歌を一つやらかさうか。僕の歌は、君、聞いた事が無いだらう。めつたにやらないんだ。でも、今夜は一つ歌ひたい。ね、君、歌つてもいいたらう。」 「仕方がない。拝聴…

「ぢつと」見つめる手の指は、きっと白くて繊細

[メタセコイア] 《作品に登場する啄木》 『貧乏するにも程がある 芸術とお金の“不幸"な関係』 長山 靖生 著 光文社新書 第四章 貧乏な上に破滅型 石川啄木 ここからは、作家タイプ別に「経済問題の傾向と対策」を考えてゆきたい。 貧乏な作家や詩人は数知れ…

その晩、洪作は啄木の歌を二首おぼえた 『しろばんば』

[ヤツデ] 《作品に登場する啄木》 『しろばんば』 井上靖 著 新潮文庫、2004年 五章 (つづき)旅館には客らしい者のすがたは見えなかった。そのくらいだから浴場はまったくふたりのものだった。犬飼は風呂につかりながら大きな声で歌をうたった。 ──東海の…

“枯葉の影が テーブルに落ちている” 現代詩の新鋭 紹介

詩集『僕が妊婦だったなら』山下洪文 薔薇色の瞳 枯葉の影が テーブルに落ちている まだ飲み終わらない 君の コップにも 幽やかな秋が降っていた 蒼空はあまりにも優しくて 僕たちの微笑は 氷りついている もうすぐ雪が降るだろう もうすぐ空が降るだろう 雫…