新刊『増補新版 海の蠍(さそり) 明石海人と島比呂志 ハンセン病文学の系譜』
山下多恵子 著 未知谷
2017年1月発行 2500円+税
- 明石海人と島比呂志──本書において私は、彼らの生きた姿と残された言葉をたどりながら、生きることと書くこと(歌うこと)の関係を考えたい。
- 極限にあってなお、書く(歌う)ことをやめなかった、それどころか書くことに全生命を注ぎこみ、そのことによって生き抜いたという事実は、私がずっと問い続けてきたことへの大きなヒントになるように思われる。すなわち、ひとはなぜうたうのか。私が知りたいのは、それである。
- 彼らが全身全霊で伝えた言葉を、私たちもまた全身全霊で受け取らなければならない。それは言葉に託した彼らの思いであり、残った者に対する信頼のかたちであるからだ。
目次
海の蠍 明石海人への旅
I 「癩」であること
II 歌集『白描』の世界人間への道 島比呂志の地平
I 「人間」として
II 囚われの文学──島比呂志を読む島比呂志からの手紙「らい予防法」を越えて
増補新版へのあとがき
- 『海の蠍』は、2003年に刊行されました。私の初めての本でした。13年かかって、「増補新版」というかたちで再び世に出せることになり、感慨深いものがあります。
- 久しぶりに自分の書いたものを読み返し、明石海人・島比呂志という、ふたつの実存と再会したような気がしました。軽い、あまりにも軽い言葉たちが闊歩するこの時代に、ふたりの命がけの言葉が投げかけるものは大きいのではないでしょうか。
2016年12月 山下多恵子