〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

『鉄くず拾いの物語』ボスニア・ヘルツェゴビナの映画


[ガラス模様]


『鉄くず拾いの物語』Epizoda u životu berača željeza

  • 監督 ダニス・タノヴィッチ
  • 出演 ナジフ・ムジチ セナダ・アリマノヴィッチ


ボスニア・ヘルツェゴビナの映画。
小さな村に住むロマ族の夫婦と幼い女の子ふたり。日々の生活が細かに暖かく描かれる。夫は鉄くずを拾いそれを売ってわずかの稼ぎを持って帰る。妻は洗濯をし幼い二人の子どもの世話をし食事を作り、夫を迎える。
暮らしの匂いに満ちた映像に引き込まれた。


三人目の子がおなかにいる妻が突然の腹痛に襲われる。そこから大変なことに……。
近所や親類は貧しいなかでギリギリにこの家族を支える。凍てついた道から男が助けを求めれば、すぐに応えて一緒に働いてくれる。


見終わってから、映画の解説を読んで驚愕した。登場する人物はほとんどそのままその地で暮らす人たちだった。違っていたのは医者のみ。主演のご夫婦がそのままその人だったことに感動した。
しかもベルリン国際映画祭審査員グランプリ、主演のナジフ・ムジチが男優賞など、数々の賞を受賞した。


ロマ族は90パーセントを超える失業率だと監督は言う。だから、保険証もない、被選挙権もない。


子どもの明るい声といつも傍を離れない犬、そして夫婦の何気なくしかし深い愛情がこの映画を貫いていた。
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