〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い息づかいに触れてみたい

『啄木 新しき明日の考察 』時代閉塞を撃つ「革命」という希望


[左:表紙  右:ジャケット]


『啄木 新しき明日の考察』を読む -「啄木の息」管理者

「はじめに」より

  • (2011年3月11日の)この未曽有の出来事により、日本は閉塞状況に陥っています。もし啄木が生きていたら、この時代閉塞の状況に対してどのようなことを考え表現したでしょうか。
  • どんな時も、啄木は常に「新しき明日」を見つめ、それに向かって考察しなければならないと語ったことでしょう。
  • 啄木のシンプルな考えは……、実に力強いメッセージとなって100年後の私たちの心を捉えて放さないのです。


「明日の考察」のためにそれぞれの章にキーワードをおいて論じています。
キーワード「天職」では、初期、自分の生きる道は文学や文芸でありそれこそが「天職」、新聞記者は副業と捉えていました。ところが1909年秋「妻の家出」という打撃を「生活者としてのいい加減な態度に対しての批判」と受け止めることで「天職」観は反転します。
  こころよく/我にはたらく仕事あれ/それを仕遂げて死なむと思ふ
著者は、この歌は「何が一体自らの「天職」なのか、それを見つけることができていない」という啄木の心情を詠んだと考え、「そこに、新しき明日の考察をするにふさわしい自らの仕事を見つけだしていこうとしていたのかも」と読み説いています。

「海」というキーワードでは、初期の啄木は明治三陸津波のイメージやハイネの詩等から「怒り」「恐怖」を持っていました。しかし、実際に海を見、海辺に寝転んだりするうちに啄木の表す「海」は「恋人・情人」へと反転していきます。「海」という繰り返し登場するモチーフ、そこに著者は「啄木の創作の秘密のようなものを感じ」、「その秘密こそは実は自ら書いた過去の作品を上手に再生産しながら、次の作品に結びつけ生み出していくというその仕方に一端があると思える」と記しています。
他のキーワードについても緻密な事柄の積み重ねで啄木の成長の秘密を解明していきます。
辛亥革命という希望」の章では、啄木が中国に抱く関心について述べています。秘密結社「哥老会(コーローかい)」のこと、『水滸伝』『三国志』、李白杜甫への思い、現実の中国人との接触等を土台において、啄木が辛亥革命に対して「希望」を持つことができたわけを指摘しています。


これまで脳内でてんでんばらばらに浮遊していた歴史的事実や文化、そして啄木についての勝手な思い入れが、著者の深く鋭い太刀捌きによってあるべき場所に収められていく感じがします。
啄木がわずか10年間の文学活動の中で、歌人・詩人・評論家・随筆家・小説家……として驚くほどの作品を残したその秘密。あの年齢で日本の中でもごく少数の人だけが知る情報を得ていた啄木。啄木の凄いところはそれを形にして残したこと。あの時代に!


この時代閉塞感を拓いていく力の一翼に啄木がいることを信じさせてくれる本です。


『啄木 新しき明日の考察 』池田功/著