〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

映画 読書

『橋のない川』<その7>-終 啄木は、ふるさとの山はありがたきかな、と歌ったが…

[大正ガラス] 《作品に登場する啄木》 『橋のない川』 住井すゑ 新潮社 (つづき) <その7>第五部 《落花の賦》孝二たちは夕日にきらめく校舎の窓をうしろに、やがて大橋を西に越えた。 西の山なみ──金剛、葛城、二上、生駒は、きょうもその存在のままを…

『橋のない川』<その6> かにかくに坂田の里は恋しかり 似非啄木

[スダジイ] 《作品に登場する啄木》 『橋のない川』 住井すゑ 新潮社 (つづき) <その6>第三部 《影踏み》 孝二はおぼえている。 新しき明日の来るを信ずといふ 自分の言葉に 嘘はなけれど── 歌集 “ 悲しき玩具 ” に収められている啄木の歌だ。 孝二もや…

『橋のない川』<その5> そんな啄木のしあわせが羨ましかった…

[狐の嫁入り] 《作品に登場する啄木》 『橋のない川』 住井すゑ 新潮社 (《海酸漿》つづき) <その5> 孝二はふとんにうつ伏せた。孝二は思いきり泣きたかった。けれども啄木がその歌でうたっているように孝二には泣けない。孝二は、 死ぬまでに一度会は…

『橋のない川』<その4> 「畑中が石川啄木の歌集を持ってるの、知ってるけ?」

[氷の花] 《作品に登場する啄木》 『橋のない川』 住井すゑ 新潮社 (つづき) <その4> 《海酸漿》 貞夫と恒太郎は神功皇后を祀る社殿のうしろで弁当をひろげた。緑一色の耕地の中に点在する家々の白壁。四すじのたて縞のように盆地を走る葛城、曾我、飛…

『橋のない川』<その3> 自分の思いどおりに歌うたら、それ、やっぱり歌け。

[シードラゴン] 《作品に登場する啄木》 『橋のない川』 住井すゑ 新潮社 (つづき) <その3>ところで放課後、学級日誌を記入する孝二を、貞夫は今日も教室の片隅で待ち合わせていたが、 「孝やん、ここに、ええのがあるで。」と、歌集のとある頁をゆびさ…

『橋のない川』<その2> 一人かくれて “一握の砂" の頁をくった

[運搬船] 《作品に登場する啄木》 『橋のない川』 住井すゑ 新潮社 (つづき) <その2>貞夫もひととき一緒に笑っていたが、 「もう一つまねして作ったろか。“一度でも我に頭を下げさせし 人みな死ねと いのりてしこと” というのを、“一度でも我を小森と嘲…

『橋のない川』<その1> 一握の砂、てなんやネ。

[ミツマタ] 《作品に登場する啄木》 『橋のない川』 住井すゑ 新潮社 <その1> 第二部 《竹馬 一》 この手紙といっしょに送る歌集は、豊さんがくれたもので、作者の石川啄木という人も、幸徳秋水に心を傾けていた一人やそうです。こういう歌なら、お前はん…

『復元 啄木新歌集』啄木が再現VTRに !?

『復元 啄木新歌集』を読む -「啄木の息」管理者 (啄木が)氷嚢の下から、どんよりした目を光らせて、いくたびもうなづいた。…「それで、原稿はすぐ渡さなくてもいゝのだろうな。訂さなくちやならないところもある。癒つたらおれが整理する」と言った。(土…

『ひとりたび一年生』啄木が気に入っていた へんてこな狛犬

[『ひとりたび一年生』花巻温泉編] 《作品に登場する啄木》 『ひとりたび一年生』 たかぎなおこ メディアファクトリー (P.061)そしてそのあと石川啄木が気に入っていたへんてこな 狛犬があるという神社に行ってみることにしました けっこう遠くて少し迷っ…

『約束の冬』「啄木の歌碑? 観に行きたいとは思わないわ」

[シロミノコムラサキ] 《作品に登場する啄木》 『約束の冬』上・下 宮本輝 文藝春秋 (下巻 P.140)「裏切り者ってのは、血判状に名をつらねたやつのなかから出るのよ」 小巻は言って、自分の軽自動車のドアをあけ、 「さあ、これから小樽の街の観光スポット…

『スペース』石川啄木はほとんど無視されていますね

[ユズリハ] 《作品に登場する啄木》 『スペース』 加納朋子 東京創元社 (P.85)色々なところを見学していて思ったのですが、岩手では宮澤賢治がこれだけ大切にされているのに引き替え、石川啄木はほとんど無視されていますね。もちろん、歌碑くらいはあるん…

『うちにはムーちゃんが…』東海の小島の磯の白砂に

[うちにはムーちゃんがいる] 《作品に登場する啄木》 『うちにはムーちゃんがいる』 照丘真弓 メディアファクトリー (コミックエッセイ) (P.116) ムーちゃんと岩手旅行に行ったのですが 時間がなくて石川啄木記念館に行けず 帰ってからなんとなく 石川啄…

『青春の門』<その2- 終> 非凡なる人のごとくにふるまへる…… 啄木

[ヌルデ] 《作品に登場する啄木》 『青春の門』第三部 放浪篇 五木寛之 講談社 改訂新版 <その2- 終>〈啄木と馬鈴薯〉つづき(P.238) (西沢)「(中略) 世の中には、早く本を読みすぎた人間の不幸、ってものがあるんじゃないかね。おれたち普通の人間…

『青春の門』<その1> 自分よりも年若き人に半日も…… 啄木

[ガマズミ] 《作品に登場する啄木》 『青春の門』第三部 放浪篇 五木寛之 講談社 改訂新版 <その1> 〈啄木と馬鈴薯〉(P.234) 西沢はちょっと沈黙したあと、無精ひげを指でなでながら、また話しはじめた。 「死ぬなら函館で死のうと思う──なんて、啄木は…

『本棚から猫じゃらし』啄木は憧れの人…私の青春を返してほしい

[アザミ] 《作品に登場する啄木》 『本棚から猫じゃらし』 群ようこ 新潮文庫17冊目 石川啄木「ローマ字日記」 <惚れると不幸になる男>(P.193) ちょっとした心の隙間に女性をいれて、自ら枠にはまってしまって苦悩した男性もいる。石川啄木もそういった…

『ウエザ・リポート』石川啄木も徘徊したという、あの砂山…

[キツリフネ] 《作品に登場する啄木》 『ウエザ・リポート』 宇江佐真理 PHP研究所 <砂山>(P.116) とりわけ、胸を締めつけられるような気持ちになったのは砂山の景色だった。かつて、私の通っていた中学校の近くに砂山があった。 そう、石川啄木も徘徊し…

赤裸々さと煩悶から見える 新たな啄木像

池田功 著 新日本出版社 2011年2月発売 1,995円 目次 1 絶望の中で自らを鼓舞 2 社会主義への目覚めと模索 3 啄木日記の魅力とは 4 日記作品化への努力 5 国際性を持つ日記の意義 『啄木日記を読む』を読む - 啄木の息管理者 日記を書き出そうとする人は元日…

『おん身は花の姿にて』山下多恵子 編

『おん身は花の姿にて』 網野菊アンソロジー 網野 菊 著 山下 多恵子 編 出版社 未知谷 2,520円(2,400円+税) 2011年2月発行 網野菊は、1900年(明治33)生まれの作家。実母が姦通罪で獄に入り離縁され、父の再婚でその後3人の継母を迎える。この四人の母…

非常勤の村内先生『青い鳥』

[シロミノマンリョウ] 『青い鳥』 重松 清 著 新潮社 2007年 1,680円 中学校の臨時教員・村内先生には吃音がある。先生の話は時間がかかり聞き取りにくい。しかし、本当に伝えたいことしか言わない。先生は、自殺や虐待やいじめに傷ついている中学生の「そば…

僕らのロケットが飛んだ--カムイスペースワークス代表取締役

[木に棲む] 『NASAより宇宙に近い町工場』 僕らのロケットが飛んだ 植松 努 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2010年(第七刷) 1,300円 「すべて自腹で宇宙ロケット開発に取り組む北海道の小さな町工場から、自分も社会をよくしたいと思うすべての人へ…

啄木と郁雨 友の恋歌矢ぐるまの花

[表紙] 『啄木と郁雨 友の恋歌矢ぐるまの花』を読む -「啄木の息」管理者 山下多恵子 著 未知谷 出版 2010年9月発行 2,625円(本体2,500円+税) 「と」は「戸」。新しい世界への入り口。そこをあければ、まだ見ぬ世界が開ける。石川啄木と確かに「出会って…

『髪結い伊三次捕物余話』わっちは一本立ちの芸者で生きてきた

[ヒメオドリコソウ] 『髪結い伊三次捕物余話』シリーズ 幻の声・ 紫紺のつばめ・さらば深川・さんだらぼっち・黒く塗れ・君を乗せる舟・雨を見たか・我、言挙げす 宇江佐真理 著 文藝春秋 1997〜2008年 時代小説は数あるが「いま好みの一冊を述べよ」と言わ…

『ジュリー&ジュリア』どうぞ、召し上がれ

【ジュリー&ジュリア】 『ジュリー&ジュリア』 Julie & Julia 監督・脚本 ノーラ・エフロン 2009年 アメリカ 出演 メリル・ストリープ エイミー・アダムス スタンリー・トゥッチ クリス・メッシーナ リンダ・エモンド メアリー・リン・ライスカブ ジェーン・…

『しがみつかない生き方』がんばれば夢はかなう?

【スイセン】 『しがみつかない生き方 「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』 香山リカ 著 幻冬舎新書 2009年 740円+税 「ふつうの幸せ」を手に入れるには・・・「<勝間和代>を目指さない」。この章が一番面白かった。がんばれ! がんばれ! 夢をあき…

『キャピタリズム マネーは踊る』マイケル・ムーア監督

【『キャピタリズム』】 『キャピタリズム マネーは踊る』CAPITALISM:A LOVE STORY 2009年 アメリカ 監督 マイケル・ムーア 製作 アン・ムーア 製作総指揮 キャスリーン・グリン ボブ・ワインスタイン ハーヴェイ・ワインスタイン キャスト マイケル・ムーア…

NHKに登場『土に書いた言葉』吉野せいアンソロジー

【表紙】 『土に書いた言葉』吉野せいアンソロジー 吉野せい著 山下多恵子 編:解説 出版 未知谷 2009年 2,400円+税 夫婦とは何か、家族とは何か、生きるとは何か。吉野せいという人間の真実の言葉たちが、生きていくことの辛さ切なさを、そして喜びを教える…

『沈まぬ太陽』仕事とは、家族とは、人生とは・・・

【黄葉】 『沈まぬ太陽』 監督 若松節朗 原作 山崎豊子 日本 2009年 出演 渡辺謙 三浦友和 松雪泰子 鈴木京香 石坂浩二 香川照之 木村多江 大杉漣 柏原崇 戸田恵梨香 西村雅彦 山田辰夫 松下奈緒 宇津井健 小林稔侍 加藤剛 清水美沙 鶴田真由 柴俊夫 風間ト…

『プール』プールのまわりに集まる5人の物語。

【影の中にそれぞれのサイン】 『プール』 監督 大森美香 原作 桜沢エリカ「プール」 出演 小林聡美 加瀬亮 伽奈 シッテイチャイ・コンピラ もたいまさこ タイのチェンマイ。小さなプールのまわりに集まる5人の6日間の物語。 娘を日本に置いて(置き去り?)…

『劔岳 点の記』信じたのは、仲間の心。

【誰かが行かねば、道はできない。】『劔岳 点の記』 監督 木村大作 原作 新田次郎 出演 浅野忠信 香川照之 松田龍平 宮崎あおい 仲村トオル 役所広司 モロ師岡 螢雪次朗 仁科貴 蟹江一平 小澤征悦 新井浩文 鈴木砂羽 笹野高史 井川比佐志 國村隼 夏八木勲 …

『蟹工船』本日 初日!

【小林多喜二コーナー 小樽文学館】 『蟹工船』混迷の現代を生きるすべての人に! 監督 SABU 2009年7月4日公開 日本 出演 松田龍平 西島秀俊 高良健吾 新井浩文 柄本時生 木下隆行 木本武宏 三浦誠己 竹財輝之助 利重剛 清水優 滝藤賢一 山本浩司 高谷基史 …