〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

読み出したら止まらない 愛のシンフォニー『オリーブの樹』


[『オリーブの樹』]


廃れゆく塩田と女性の悲哀、重ねて

  • 台湾のベストセラー小説『明月(クリスタルムーン)』(桜出版)の著者、蔡素芬(ツァイスーフェン)が来日した。『明月』は、激動する戦後の台湾社会を生き抜く男女の愛情や家族の絆を骨太に描いた。
  • 塩づくりが盛んな台湾南部の村で生まれ育った明月(ミンユエ)と、幼なじみで漁師の大方(ターファン)は互いに心を寄せていた。しかし明月は家を守ろうとする母親によって別の男と見合い結婚させられる。思いを断ち切れない2人は関係を持ち、明月は女の子を産む。それは大方への愛を表現し、封印することでもあった。そうとも知らず彼は村を出て行く。
  • 台湾の新聞「聯合報」に連載、1994年に『塩田児女』の題名で出版。人口約2350万人(現在)の台湾で10万部を超えるベストセラーとなった。昨年、日本でも翻訳出版された。
  • 続編『オリーブの樹(オリーブツリー)』(原題『橄欖樹』)も先月、日本で出版された。明月と大方の娘・祥浩の成長が、高度経済成長が続く80年代の都会のキャンパスライフや、伝統的な塩田が急速に消えていく故郷の風景と共に描かれる。
  • 蔡は、創作で常に意識するのは「日々大きくなる中国の存在感」。「それを踏まえた上で、両岸(台湾と中国)の二つの社会が戦後どのように分かれてきたのかを、人々の感情と共に描きたい」と語った。(竹端直樹)

(2015-12-22 朝日新聞>夕刊)

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『オリーブの樹(オリーブツリー)』

  • 蔡 素芬 著  黄 愛玲 訳  林 水福 監修
  • 発売元 桜出版 電話. 019-613-2349 FAX. 019-613-2369
  • 発売月 2015年11月
  • 定価  2000円+税