〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

『沈まぬ太陽』仕事とは、家族とは、人生とは・・・


【黄葉】


沈まぬ太陽

  • 日本 2009年 


国民航空の労組委員長である恩地(渡辺謙)は、労働条件の改善こそ安全安心のカギだとして会社組織と激しく闘う。恩地と肩を並べて闘っていたはずの行天(三浦友和)は、出世のため裏切り行為に走る。懲罰人事でカラチ、テヘラン、ナイロビと飛ばされてしまう恩地、エリートにのし上がっていく行天。二人の生き方に、1985年の犠牲者520人を数える御巣鷹山墜落事故が重なる。


フィクションと書いてはあるが限りなくノンフィクションに近い。空港会社の内部問題や政治家・官僚たちとのどす黒い関係は本当なのだろう。
恩地の妻は、仕事に明け暮れる夫の陰で二人の子どもを育て義理の母の病気を看取る。夫婦の深い繋がりがなければ出来ないことだと思われる。

途中に10分間休憩がある。200分を超える長さだから、一息を入れるのにちょうどいい。
恩地は正義の味方でありスーパーヒーローだが、人はなかなかそうは出来ない。行天のように金や女に負けてしまう生き方を肯定したい気持ちもわかる。

原作を読んでいないので、ラストに向かってどうなるか心穏やかではなかった。しかし、終わったとき「観てよかった!」と思えた。