2012-02-28 『橋のない川』<その7>-終 啄木は、ふるさとの山はありがたきかな、と歌ったが… 作品に登場する啄木 映画 読書 [大正ガラス] 《作品に登場する啄木》 『橋のない川』 住井すゑ 新潮社 (つづき) <その7>第五部 《落花の賦》孝二たちは夕日にきらめく校舎の窓をうしろに、やがて大橋を西に越えた。 西の山なみ──金剛、葛城、二上、生駒は、きょうもその存在のままを空に対けている。誇張もなく、自負もなく、失意もなく──。 “ 啄木は、ふるさとの山はありがたきかな、と歌ったが、誰か、 “ 山になりたい、” と言いはしなかったろうか? ” 思いながら孝二は山を眺めた。 山を眺めながら孝二は歩いた。 常にも増して山は美しかった。(『橋のない川』終)