〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

『復元 啄木新歌集』啄木が再現VTRに !?


『復元 啄木新歌集』を読む -「啄木の息」管理者

(啄木が)氷嚢の下から、どんよりした目を光らせて、いくたびもうなづいた。…「それで、原稿はすぐ渡さなくてもいゝのだろうな。訂さなくちやならないところもある。癒つたらおれが整理する」と言った。(土岐哀果『悲しき玩具』編集後記)

啄木は癒らず訂さず死んだ。
編者は啄木となり幻の歌集を編んだ。

  • たくさんの資料の中から歌の誕生した瞬間を解明する。

啄木自身の体調とのつきあい、妻・子・母・父・妹・同僚・友らとのあいだ、歌の世界・病院のこと…そして幸徳事件。縦糸も横糸も“編み込み模様”も、パズルのように組み合わせてくれる。
  「もう歌はやめよう!」と決断したとき。
  六月二六日午前二時は歌人石川啄木誕生の瞬間。
  一〇月二日から一〇月二六日までの間に、啄木の変身は完了。
  天才石川啄木が誕生。

  • また、ルビのひとつひとつ、「寝」と「寐」の使い分け等を啄木の意図したこと・意図したものを正確に求めて訂した。
  • 「あとがき」で、啄木の「白鳥の歌」二首(最後の歌)と谷村氏の「昴」について触れている。「(谷村新司氏は)…石川啄木を読みました。読んだと言うより食べました。そしてそのとき食べた糧が、曲や詩となって出てくるのです」と。

   呼吸(いき)すれば、
   胸の中(なか)にて鳴る音あり。
    凩よりもさびしきその音!
 
   眼閉づれど
   心にうかぶ何もなし。
    さびしくもまた眼をあけるかな

谷村新司さんは先月TV番組「EXILE魂」に出演し、「昴はわずか1時間半で完成した」と紹介していた。胃の腑に焼き付くような凄い糧を食べたから、それが凄まじい奔流となって詩となり曲となって生まれ出たのだろう。

  • いま、実際にみることのできない「その時」の啄木の立ち居振る舞い、あたりの様子、世間の風の匂いまでもが再現VTRを観るように描かれている。
  • この本を手にとると、挫折のなかから大災害のなかから立ち上がる希望の糧がきっと見つかる。

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『復元 啄木新歌集』近藤典彦 編
  一握の砂以後(四十三年十一月末より)
  仕事の後

  • 桜出版-文庫判 定価1,050円
  • 桜出版(TEL.03-3269-3420 FAX.03-3269-8480  E-mail sakuraco@leaf.ocn.ne.jp)

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