〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

非常勤の村内先生『青い鳥』

[シロミノマンリョウ]


『青い鳥』

  • 重松 清 著 新潮社
  • 2007年 1,680円

中学校の臨時教員・村内先生には吃音がある。先生の話は時間がかかり聞き取りにくい。しかし、本当に伝えたいことしか言わない。先生は、自殺や虐待やいじめに傷ついている中学生の「そばにいる」ことをその子に伝えていく。

「いじめは……ひとを、きっ、嫌うから、いじめになるんじゃない。人数がたっ、たっ、たくさんいるから、いじめになるんじゃない。ひとを、踏みにじって、くくっ、くっ、苦しめようと思ったり、くくっ、くっ、くっ、くく苦しめてることにきっ、気づかずに、……くくっ、くっ、苦しくて叫んでるこっ声を、ききっ、ききっ聞こうとしないのが、いじめなんだ……」 ほんとうに、この先生は、いま本気でしゃべっているんだ、とわかる。

読み慣れてくると、先生の言葉がまっすぐに聞こえてくる。


村内先生は本当には「いない」けれど、「いる」のではないか。ずっとそう思って8つの短編を読んでいた。
最後の「カッコウの卵」で、先生が何も自分のことは教えないままバスに乗って去っていくシーンで、私は感じてしまった。先生は「いてほしい」が、いなくてもなんとかして村内先生を自分の中に創りだしていく力を身につけよう……と。