〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

『髪結い伊三次捕物余話』わっちは一本立ちの芸者で生きてきた


[ヒメオドリコソウ]


『髪結い伊三次捕物余話』シリーズ

        • 幻の声・ 紫紺のつばめ・さらば深川・さんだらぼっち・黒く塗れ・君を乗せる舟・雨を見たか・我、言挙げす

時代小説は数あるが「いま好みの一冊を述べよ」と言われれば『髪結い伊三次捕物余話』(シリーズ物だが…)を挙げたい。

男も女も年寄りも赤ん坊も、町民の世界も武士の世界も、宇江佐さんは薫り高く描く。 

髪結い伊佐治の妻(お文)は芸者だ。仕事仲間が伊佐治を諭して言う。
「お前ェも気をつけな。女房の稼ぎがあるから、今の暮らしが成り立つってことをな。勝手なことをすれば、あのお文のことだ。倅を連れて、とっとと出て行ってしまうぜ」

今よりずっと平等ではない社会に、すっきりと自立した人間を登場させる。江戸時代も現代も人の世はみな変わりない。