《作品に登場する啄木》
『本棚から猫じゃらし』
群ようこ 新潮文庫
17冊目 石川啄木「ローマ字日記」
<惚れると不幸になる男>(P.193)
- ちょっとした心の隙間に女性をいれて、自ら枠にはまってしまって苦悩した男性もいる。石川啄木もそういった男性の一人ではないだろうか。作家、詩人を顔で選んでいた学生時代、石川啄木の人気は女生徒の間で絶大であった。
- ところがその後、「ローマ字日記」を読んだ啄木フリークは怒った。啄木とつきあってもいないのに、「騙された」という人もいた。
- 「私は中学、高校と、啄木は憧れの人でもあった。私の青春を返してほしい気持ちだ」ともいった。あまりに彼女が怒って、「読んでみなさいよ」というから、読んでみたら、彼女のいうように私たちが想像していた啄木像とは違う部分が多々あった。
- これは結婚してはいけない、結婚にはむかない人が家族を持ったための不幸である。
- この本は、彼のように野放しがふさわしい男性が、妻子持ちでありながら野放しでいたいと悩んだ記録である。そしてかたくなに婚姻関係を拒絶するほど、精神的に強くなかった男性の、正直な甘えの記録でもあるのだ。