TANKANESS 短歌のすみっこを伝えるWebマガジン
教科書に載っている歌人の作品を読んでみよう!~石川啄木『一握の砂』編~
みなさんこんにちは。TANKANESSライターの貝澤駿一です。この記事を書いているのは5月のおわりですが、全国的に少しずつ休校が解除されていっていますね。学校の授業が待ち遠しいなあという気持ちの学生さんもたくさんいるのではないでしょうか。
「国語の教科書に載っている歌人」の作品の魅力を、みなさんに知ってもらうためにこの記事を執筆しました。その中でも今回は「石川啄木(いしかわたくぼく)」という歌人を取り上げようと思います。
1 啄木ってどんな人?
1 稀代の文学者であり、借金の天才
まずは、この歌を声に出して読んでみてください。
はたらけど
はたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢつと手を見る
この歌の作者、石川啄木(1886~1912)は、生涯を通じて壮絶な貧困を生きた歌人です。
啄木は借金の天才であり、返す当てもないのについつい金を貸したくなるような、見捨てておけないところがあったのですね。ちなみに、赤裸々な啄木の「日記」や「手紙」は、それこそが日本近代文学の最高峰だという声も少なくありません。
2 『一握の砂』について
『一握の砂』は啄木の死のおよそ2年前、明治43年に刊行された、彼の生前唯一の歌集です(死後、友人たちの尽力によって第二歌集『悲しき玩具』が発表されています)。
1 「我を愛する歌」
東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる
歌集の巻頭を飾る作品です。教科書に取り上げられることも多い作品ですね。
この歌の舞台は、函館の大森浜という海岸です。函館時代の啄木は短いながらも安定した職に恵まれ、生涯でもっとも穏やかに暮らしたといわれています。
<頬につたふ/なみだのごはず/一握の砂を示しし人を忘れず>
<いのちなき砂のかなしさよ/さらさらと/握れば指のあひだより落つ>
<大という字を百あまり/砂に書き/死ぬことをやめて帰り来たれり>
と、歌集の冒頭には大森浜を歌ったと思われる作品がいくつか並んでいます。「いのちなき~」の歌にあるような、ある対象への情愛を示す作品に、啄木らしさがよく表れています。
たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず
ふとお母さんを背負ってみたら、あまりにも軽くてこみあげるものがあった。そして三歩も歩くことができなかった。感動的な場面であり、啄木の母への深い愛情が示されています。
2 「煙」
3 「秋風のこころよさに」
4 「忘れがたき人人」
5 「手套を脱ぐ時」
3 まとめ 『一握の砂』をどう読むか
1 啄木の短歌を読むときのポイント
『一握の砂』は啄木の生活の記録であり、明治末期の文学青年の残した「近代」という時代の記録でもあります。手紙や日記が文学作品として評価されているということは、それだけ啄木が当時の日本社会を詳細に観察し、克明に記録したということにほかなりません。
つまり、啄木の文学を読むカギは、啄木の人生、もっと言えば啄木の生きた時代を知るということにあるのです。
2 もっと知りたい人へ(参考文献一覧)
4 おわりに
1 この記事を書いた人
貝澤駿一
1992年横浜市生まれ。「かりん」「gekoの会」所属。2010年第5回全国高校生短歌大会(短歌甲子園)出場。2015年、2016年NHK全国短歌大会近藤芳美賞選者賞(馬場あき子選)。2019年第39回かりん賞受賞。
(2020-06-18 TANKANESS)
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