〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

競馬実況アナ日記 啄木ゆかりの地を訪ね歩く

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タイトル「ぢっと手を見る」五稜郭近くの像 後ろに啄木鳥

競馬実況アナ日記

競馬場・ウインズ発 啄木の足跡と歌碑を巡る旅

  • 中央競馬の夏の北海道シリーズが始まった。北海道への移動は函館、札幌とも航空機が基本。夕方の便に乗れば、進行方向左側の窓から美しい夕陽を見ながらの飛行になる。函館につく頃には、市内の街並み、五稜郭、そして函館競馬場のコースやスタンド、パドックを眼下に見ながら空港へと降下することが多い。今年もこの景色を楽しみにしていた。ところが、新型コロナウイルスの影響で函館行きは欠航や満席。4年前に開業した北海道新幹線しかない。
  • 学生時代、夜行列車に乗り、津軽海峡を連絡船で渡って何度か北海道へ長旅をした。歌人石川啄木の生涯に現代の純愛を重ね合わせた小説「北帰行」(外岡秀俊著)に感化され、啄木ゆかりの地を訪ね歩く旅。啄木の生まれ育った盛岡市周辺から彼の移り住んだ北海道函館、小樽、札幌、釧路と記念館や歌碑を列車に乗って訪ね歩いたものだった。

■盛岡で途中下車、歌碑と競馬場へ

  • 1992年9月14日。函館競馬の帰りに盛岡で途中下車した。盛岡下車の目的は啄木の足跡を改めてたどるだけでなく、市の中心部から3キロほど離れた場所にあった地方競馬岩手県競馬組合)の盛岡競馬場(現在は郊外に移設)を初めて訪ねることだった。盛岡城跡公園(岩手公園)の歌碑「不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心」から、旧制中学時代の啄木の散策ルートだったという天満宮近くに立つ「病のごと 思郷のこころ湧く日なり 目にあをぞらの煙かなしも」の碑を確認。そこから街の外周道路を40分ほど歩いた高松公園の北側に盛岡競馬場はあった。
  • 向正面の高低差が9メートル近いアップダウンの激しい細長い周回コース。カーブは急だがその分最後の直線は比較的長い。見るからに興味をかき立てられる形状だった。

■札幌・函館・釧路で新たな出合い

  • その後、啄木の旅からは少し遠ざかってしまった。しかし、時に新たな出合いがある。札幌で宿泊したホテルに隣接したビルには、啄木の下宿跡を示す案内板と半身像ができていた。函館五稜郭近くの道に15年ほど前に置かれた熊のアートのタイトルは「ぢっと手を見る」(はたらけど はたらけど猶わが生活楽にならざり ぢっと手を見る)だった。

石川啄木顕彰室と啄木終焉の地歌碑(東京都文京区小石川)

ラジオNIKKEIアナウンサー 佐藤泉)

(2020-06-20 日本経済新聞

 

競馬場・ウインズ発 啄木の足跡と歌碑を巡る旅 :日本経済新聞