(取材考記)
巣ごもりで増えた投稿 コロナ詠に思う新聞歌壇の役割 佐々波幸子
- コロナ禍の選歌を案じる歌が4月、朝日歌壇に載った。実際、選者4人が2週間に1度、東京本社で開いていた選歌会は4月から休会中だ。代わりにはがきを選者宅に届け、選歌を終えたら次の人へとまわすリレー方式で、各選者がすべての投稿に目を通して選ぶ「共選」スタイルを維持している。
- 週に約2500通届いていた歌壇への投稿は、「巣ごもり」の時期を経て2800通余に増えた。
- 投稿者は未就学児から100歳超の高齢者まで幅広い。鉛筆の文字からは子どもの率直な声が聞こえてくる。
《こんいろのランドセルとおねえちゃんとしょうがっこうにはやくいきたい》やまぞえそうすけ
- こうした肉声に接し、「歴史書に載らない生活者の声を残し、時代を映す」という新聞歌壇の役割を改めてかみしめている。
- 初代選者に石川啄木を据えて朝日歌壇が始まったのは1910年。その後も斎藤茂吉、近藤芳美らその時代を代表する歌人が市民の歌に向き合い、確かな眼で選んできた。1世紀を超えて紡がれてきた場を次世代にしっかりと手渡していきたい。
(2020-06-22 朝日新聞)