春秋 -日経新聞-
- 「何となく、/今年はよい事あるごとし。/元日の朝、晴れて風無し」。新春のおだやかな空に、石川啄木のこの歌はよく似合う。借金と病気に苦しんだ啄木だが、それだけに新しい年への思いも強かったのだろう。ほかにも「悲しき玩具」に正月の歌はいくつかある。
- 「腹の底より欠伸(あくび)もよほし/ながながと欠伸してみぬ、/今年の元日」。心はいよいよゆったりと、そしてしばし夢を見たかもしれない。
- この明治の異才は時代閉塞を唱えつつこんな詩も残している。「見よ、今日も、かの蒼空(あをぞら)に/飛行機の高く飛べるを。」
(2016-01-01 日本経済新聞)
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