[チロリアンランプ]
我を愛する歌
(P.10)
飄然と家を出でては
飄然と帰りし癖よ
友はわらへど
ふるさとの父の咳する度に斯く
咳の出づるや
病めばはかなし
<ルビ>飄然=へうぜん。出で=いで。度に斯く=たびにかく。
(P.11)
わが泣くを少女等きかば
病犬の
月に吠ゆるに似たりといふらむ
何処やらむかすかに虫のなくごとき
こころ細さを
今日もおぼゆる
<ルビ>少女等=をとめら。病犬=やまいぬ。吠ゆる=ほゆる。何処=いづく。