我を愛する歌
(P.8)
目さまして猶起き出でぬ児の癖は
かなしき癖ぞ
母よ咎むな
ひと塊の土に涎し
泣く母の肖顔つくりぬ
かなしくもあるか
<ルビ>猶起き出でぬ児=なほ おきいでぬ こ。ひと塊=ひとくれ。涎し=よだれし。肖顔=にがほ
(P.9)
燈影なき室に我あり
父と母
壁のなかより杖つきて出づ
たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず
<ルビ>燈影なき室=ほかげなきしつ。
《つぶやき》
「燈影なき室に我あり」の歌は何時もドキッとする。杖をつきながら出てくる人影が見え、3Dの世界が始まる。