〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.12〜13)いと暗き

[ラッカセイ]


我を愛する歌


(P.12)


   いと暗き
   穴に心を吸はれゆくごとく思ひて
   つかれて眠る


   こころよく
   我にはたらく仕事あれ
   それを仕遂げて死なむと思ふ


<ルビ>仕遂げて=しとげて。


(P.13)


   こみ合へる電車の隅に
   ちぢこまる
   ゆふべゆふべの我のいとしさ


   浅草の夜のにぎはひに
   まぎれ入り
   まぎれ出で来しさびしき心


<ルビ>夜の=よの。入り=いり。出で来し=いできし。


《つぶやき》
「こみ合へる電車の隅に」の歌は、「時々電車の窓に写る 疲れた自分に驚いて 案外都会の魔物の正体はきっとそんなものです」と歌うさだまさしさんの「初雪の頃」を思い出す。