談話室 山形新聞
- 「ふるさとの訛(なまり)なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」は石川啄木による有名な歌だ。一方、劇作家の寺山修司にはこんなビターな一首もある。「ふるさとの訛(なま)りなくせし友といてモカ珈琲(コーヒー)はかくまでにがし」
- 啄木の歌を本歌として本歌取りの技法とされる。青森に生まれ育った寺山は大学への入学を機に上京し、その後多彩な活躍をする。東京の街角だろうか、都会に出てきて訛りがなくなった友達を冷ややかに眺める情景が浮かび、訛りに象徴される郷里へのこだわりを感じる。
(2020-01-13 山形新聞)