〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 啄木の年賀状「今も猶やまひ癒えずと告げてやる文さへ書かず深きかなしみに」


[マンリョウ]


「風土計」 [岩手日報]

  • 年賀状の本格的な取り扱いが全国の郵便局で始まったのは1906(明治39)年。一般郵便物と区別して取り扱う規程が制定された。
  • 石川啄木は年賀状にしばしば短歌をしたためた。04年、友人小林茂雄に宛てて「地に理想天に大日の眩(は)ゆき世に眩ゆき希望の春をむかへぬ」と記す。この時、啄木は17歳。02年に文学で身を立てようと上京したものの、翌年帰郷。
  • 東京で志を遂げられなかったが、作品発表を続け新詩社の同人となる。そのせいか、新春にふさわしく明るさを感じさせる歌だ。しかし、8年後の12年、友人岩崎正に宛てた年賀状は痛ましい。
  • 「今も猶やまひ癒えずと告げてやる文さへ書かず深きかなしみに」と窮状を詠む短歌に、友はさぞ胸を痛めたことだろう。3カ月余り後、啄木は短い生涯を閉じた。

(2017-12-25 岩手日報


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