〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「「遠くのあなたへ」 ふるさとのなまりなつかし……

「キザ」と言われて

  • 記者1年目も終わりに近くなった40数年前。日曜日に社会部に出勤すると、デスクに「出稼ぎ者の大会の取材に行け」と命令された。当時は出稼ぎが社会的な問題になっていた。社会党本部だった社会労働会館の会場に行くと、1000人近く労働者が集まっていて、すごい熱気だった。ロビーで参加者の何人かに聞くと、出稼ぎ労働の厳しさ、家族を残した寂しさなどを、それぞれが強烈なお国言葉で話してくれた。
  • その時ふっと、ある短歌が頭に浮かんだ。石川啄木の「ふるさとのなまりなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」。社に戻って、デスクに「原稿に短歌を入れたいんですが」と言うと、あっさり「いいけど、表記に間違いがないように、調査部に行ってよく確認しろ」と指示された。
  • 何日かたって、その記事がちょっとした騒ぎになったと聞いた。刷り上がりを読んだ部員たちが「誰が書いたんだ」と、農水省担当の先輩記者に問い合わせるなど“犯人探し”をしたという。部員たちからは「こういう記事はキザだ」という言葉が出たとも耳にした。……(「47NEWS」編集部 小池 新)

(2016-05-25 47NEWS>日めくり>05月25日の日めくり)47NEWS 
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