〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.44〜45)時ありて

[サルスベリ]


我を愛する歌


(P.44)


   時ありて
   子供のやうにたはむれす
   恋ある人のなさぬ業かな


   とかくして家を出づれば
   日光のあたたかさあり
   息ふかく吸ふ


<ルビ>業=わざ。


(P.45)


   つかれたる牛のよだれは
   たらたらと
   千万年も尽きざるごとし


   路傍の切石の上に
   腕拱みて
   空を見上ぐる男ありたり
  

<ルビ>路傍=みちばた。切石=きりいし。腕拱みて=うでくみて。