〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.36〜37)空寝入生呿呻など

[ヒノキ]


我を愛する歌


(P.36)


   空寝入生呿呻など
   なぜするや
   思ふこと人にさとらせぬため


   箸止めてふつと思ひぬ
   やうやくに
   世のならはしに慣れにけるかな



<ルビ>空寝入=そらねいり。生呿呻=なまあくび。


(P.37)


   朝はやく
   婚期を過ぎし妹の
   恋文めける文を読めりけり


   しつとりと
   水を吸ひたる海綿の
   重さに似たる心地おぼゆる


<ルビ>海綿=かいめん。