〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.18〜19)「さばかりの事に死ぬるや」

[杉の大木]


我を愛する歌


(P.18)


  「さばかりの事に死ぬるや」
  「さばかりの事に生くるや」
   止せ止せ問答


   まれにある
   この平なる心には
   時計の鳴るもおもしろく聴く


<ルビ>止せ=よせ。平なる=たひらなる。


(P.19)


   ふと深き怖れを覚え
   ぢつとして
   やがて静かに臍をまさぐる


   高山のいただきに登り
   なにがなしに帽子をふりて
   下り来しかな


<ルビ>怖れ=おそれ。臍=ほそ。高山=たかやま。下り来し=くだりきし。