〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.6〜7)砂山の裾によこたはる流木に

[つらぬきとめぬ玉]


我を愛する歌

(P.6)


   砂山の裾によこたはる流木に
   あたり見まはし
   物言ひてみる


   いのちなき砂のかなしさよ
   さらさらと
   握れば指のあひだより落つ


<ルビ>裾=すそ


(P.7)


   しっとりと
   なみだを吸へる砂の玉
   なみだは重きものにしあるかな


   大という字を百あまり
   砂に書き
   死ぬことをやめて帰り来れり


<ルビ>帰り来れり=かへりきたれり