短歌のこと
石川啄木と橘智恵子 恋愛に似た思慕の相聞歌
函館の代用教員時の同僚の女教師、橘千恵子を詠んだ22首。わずか3か月程度の「心のふれあい」であったと思われます。
頬の寒き流離の旅の人として路問ふほどのこと言ひしのみ
現代語訳 頬に当たる空気を冷たいと感じる一時の旅人として、道をきくほどのことを、その人に言っただけだ。
さりげなく言ひし言葉はさりげなく君も聴きつらむそれだけのこと
現代語訳 さりげなくいった言葉はさりげなく君も聞いたことだろう。ただそれがけのことだ。
歌だけを見ると、あるいは作品を描くためのモデルかとも思ったが、妻に見られないように書いた『ローマ字日記』にも智恵子についての記載があり、思慕は本当のものであったのかもしれません。
答えは、啄木の短歌それ自身にあるように思えます。
(2022-11-19 短歌のこと)