〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「言いたいこと」を素直に極端に鋭利に言うから……爽快感が違う

ゲッケイジュ

実はクズ男?石川啄木の「憂鬱名言」...読むと元気が湧いてくる!

【尾藤克之のオススメ】

    「一度でも我に頭を下げさせし、人みな死ねと、いのりてしこと」(一度でも俺に頭を下げさせた奴ら、みんな死にますように)。

   これは『一握の砂』に収録された石川啄木の一首です。啄木は、夭折の天才歌人として才能に恵まれながらも、世に恵まれず清貧に甘んじたイメージがつきまといます。しかし、実際の啄木には、引いてしまうエピソードが少なくありません。その極めつきが、本書で取り上げている「ローマ字日記」です。どのような内容なのでしょうか。

 「文豪たちの憂鬱語録」(豊岡昭彦 編集, 高見澤秀 編集)秀和システム


ドタキャン、仮病、借金、放蕩三昧...

  •   啄木は夭折の天才歌人として、坂口安吾宮沢賢治に影響を与えました。「はたらけど、はたらけどなほ、わがくらし、楽にならざり、ぢっと手を見る」「友がみな、われよりえらく、見ゆる日よ、花を買ひ来て妻としたしむ」「たはむれに、母を背負ひて、そのあまり軽きに泣きて、三歩あゆまず」などの短歌が知られています。
  • 啄木には「才能に恵まれながらも世に恵まれず清貧に甘んじた」「母思いの愛妻家で懸命に家族を支えた」「著名な友人に囲まれて人望家」というイメージがつきまといます。
  • しかし、実際の啄木を知ると、「クズ男」だったのではないかと疑いたくなるエピソードが少なくないのです。

妻にバレないように書いたのが「ローマ字日記」

  • 「ローマ字日記」はその名の通り、ローマ字で書かれています。妻にバレないようにするため、ローマ字表記にしたのです。

    <訳文>
    「早く起きて、麻布霞町に佐藤氏を訪ね、来月分の月給前借のことを頼んだ。今月はダメだから、来月の初めまで待ってくれとのことであった。電車の往復、どこもかしこも若葉の色が眼を射る。夏だ! 社に行って何の変わったことなし。昨夜、最後の1円を不意の宴会に使ってしまって、今日はまた財布の中にひしゃげた5厘銅貨が1枚。明日の電車賃もない」

  • 本書では500を超える名言・名文が取り上げられています。しかし、不思議なことに、これらの「憂鬱名言」を読んでいると、なぜか元気が湧いてきます。文豪は「言いたいこと」を素直に、極端に、鋭利に言ってくれるので、爽快感の切れ味が違うのです。

(2022-05-06 J-CAST

 

実はクズ男?石川啄木の「憂鬱名言」...読むと元気が湧いてくる!【尾藤克之のオススメ】: J-CAST 会社ウォッチ【全文表示】