(まちの記憶)盛岡城かいわい 盛岡市
■江戸へ昭和へタイムスリップ
- 緑豊かな城跡のほとりを大きな川が流れ、あちこちの街角から雪を残した岩手山がくっきりと見える――。4月下旬に訪れた盛岡はそんな町だった。
- この時期、盛岡で話題になるのが盛岡地方裁判所にある「石割桜(いしわりざくら)」だ。この場所は、盛岡藩の家老屋敷跡にあたる。大きな石から生えているようにも見えるが、花崗岩(かこうがん)の割れ目に落ち込んだ種が芽を出して育ち、中から押し広げていったとみられる。
- 石割桜から数分歩くと、右手に大きな鳥居が見えてきた。桜山神社の鳥居だ。この一帯は16世紀末に築城された盛岡城の跡だ。
- 鳥居の奥、亀ケ池と鶴ケ池に挟まれた下曲輪一帯に広がるのが「桜山横丁」だ。終戦後、桜山神社の境内に海外から引き揚げて来た人たちがバラックの店舗を構えたところから始まると言われる。
- 堀に囲まれた盛岡城跡には、桜山横丁のある下曲輪のほか、多目的広場になっている城の台所跡、遠く岩手山や早池峰山(はやちねさん)を望む本丸などがある。県出身の石川啄木の歌碑などもある。徒歩で十数分ほどの中央通3丁目には啄木新婚の家もあって、こちらは市内では数少なくなった武家屋敷だ。
(編集委員・宮代栄一)
(2022-05-02 朝日新聞)