木下杢太郎、北原白秋、石川啄木…不可解な事件をめぐり、明治末期の若き芸術家が繰り広げる“迷推理”
著者は語る 『かくして彼女は宴で語る』(宮内悠介 著)
「週刊文春」編集部
- 三島由紀夫賞受賞の『カブールの園』、星雲賞を受賞した『あとは野となれ大和撫子』などのヒット作で知られる小説家の宮内悠介氏。新刊『かくして彼女は宴で語る』は、明治時代末期に実在した耽美派芸術家たちのサロン「パンの会」が舞台となった6つのミステリ連作短編集だ。この会の話を詩人で著述家の妻・Pippo氏から聞き、興味を持ったという。
- 詩人の木下杢太郎、北原白秋らが、隅田川沿いにあるモダンな料理店「第一やまと」に集っては、各々が持ち寄る不可解な事件を推理していく。
- 「耽美派の芸術家である彼らがどんな“迷推理”を繰り広げるのか、評伝などを頼りに人物像を練っていきました。何しろ彼らが残した作品は耽美的なので、作品から人物像を想像するのが難しくて(笑)。特に苦労したのは石川啄木です。彼は夭折の天才だという人もいれば、ロクデナシだという人もいて、評価がかなり多面的。実際の彼がどのような人物だったのかを想像するのは大変でした」
- 朝日新聞社校正係として就職することが決まった啄木が登場するのは、第5回「ニコライ堂の鐘」。彼は、駿河台に引っ越したばかりの与謝野晶子から、こんな奇怪な噂を聞いたという。
- 明治38年の10月のその日、聖堂にいたのは主教のニコライと3人の信徒。平日の午後、鳴るはずのない時間に鐘が鳴り、ニコライと信徒2人が駆けつけると、胸をナイフでひと突きされ、マント姿で横たわる1人の信徒の死体が。しかし鐘楼には犯人の姿がない。
(2022-03-23 文春オンライン)
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