本県文化人が描いた猫
きょう2ャン月2ャン2ャン日
猫に己の不自由さや不遇を重ねたのが石川啄木(1886〜1912年)。没後に発表された歌集「悲しき玩具」に2首がある。
猫の耳を引つぱりてみて/にやと啼けば、/びつくりして喜ぶ子供の顔かな
1911(明治44)年2月、腹膜炎で入院した時期の歌。猫は飼っていなかったが、幼い長女京子と遊んであげたい親心がのぞく。しかし半年後、歌の雰囲気は一変する。
猫を飼はば、/その猫がまた争いの種となるらむ、/かなしきわが家。
妻節子と母カツの確執、家庭への暗澹とした気持ちが漂う。病に気力を奪われたこともあるだろう。啄木文学が極まる時期、猫の対照的な捉え方に心情の変化を読み取ることができる。
(2022-02-22 岩手日報)