〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「猫の耳を引つぱりてみて/にやと啼けば、…」石川啄木 -猫の日-

f:id:takuboku_no_iki:20220223161439j:plain

本県文化人が描いた猫

 きょう2ャン月2ャン2ャン日

  宮沢賢治石川啄木、澤田哲郎…

石川啄木

 猫に己の不自由さや不遇を重ねたのが石川啄木(1886〜1912年)。没後に発表された歌集「悲しき玩具」に2首がある。

 猫の耳を引つぱりてみて/にやと啼けば、/びつくりして喜ぶ子供の顔かな

 1911(明治44)年2月、腹膜炎で入院した時期の歌。猫は飼っていなかったが、幼い長女京子と遊んであげたい親心がのぞく。しかし半年後、歌の雰囲気は一変する。

 猫を飼はば、/その猫がまた争いの種となるらむ、/かなしきわが家。

 妻節子と母カツの確執、家庭への暗澹とした気持ちが漂う。病に気力を奪われたこともあるだろう。啄木文学が極まる時期、猫の対照的な捉え方に心情の変化を読み取ることができる。

(2022-02-22 岩手日報