〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「碧い海の声の白さは降る雪よりも美しい」冬の日本海の光景が啄木の胸を打つ

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残照

二・二六事件の謎。秩父宮は何故あえて「遠回り」した?

 政治思想史が専門の放送大学教授・原武史さんが、朝日新聞土曜別刷り「be」に連載している「歴史のダイヤグラム」が、同名の新書として朝日新聞出版から刊行された。鉄道にまつわる小さなエピソードと大きな事件から近現代の歴史を浮かび上がらせる手腕は、鮮やかだ。

  • 「第一章 移動する天皇」「第二章 郊外の発見」「第三章 文学者の時刻表」「第四章 事件は沿線で起こる」「第五章 記憶の車窓から」からなる構成。

のんびり普通列車を楽しんだ谷崎潤一郎

  • 文学者の日記などを参考にした「第三章 文学者の時刻表」が、旅情をそそる。「啄木が愛した石狩の海」には、1907(明治40)年、北海道にわたり、新聞社に就職した石川啄木の日記が登場する。函館本線の小樽~札幌間には、日本海に沿って自然の野趣あふれる光景が今も残っている。翌年1月の日記にはこう記されている。
  • 「窓越しに見る雪の海、深碧の面が際限もなく皺立って、車輛を洗うかと許(ばか)り岸辺の岩に砕くる波の徂来(ゆきき)、碧い海の声の白さは降る雪よりも美しい。朝里張碓は斯くて後になって、銭函を過ぐれば石狩の平野である」
  • 冬の荒々しい日本海の光景が、啄木の胸を打っている。

 あとがきで、原さんは「鉄道は経済的な価値に還元されない文学や芸術と同様、人生にとって大切な文化ではないか」と提起している。

(BOOKウォッチ編集部)
(2021-12-04 @nifty ニュース)

 

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