〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

かなった夢 かなわなかった夢「啄木新婚の家」で思いにふける

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エンジェルストランペット

<観天望記 編集局長・桑原昇>

夢がかなうということ

  • 結婚式の会場は間借りの一部屋だった。明治38(1905)年、5月の終わり。花嫁をはじめ集まった家族や友人は、10日も前に東京を発ち帰郷してくる新郎を待っていた。
  • 待ち続けた……が、いくら待てども新郎はやって来ない。仕方なく新婦だけで式は挙げられた。
  • 新郎はそのころ、途中下車して知人から借金し、ぐずぐずと遊び回っていた。要するに、祝言をすっぽかしたのである。新妻の待つその間借りの家にようやく姿を見せたのは4日後のことだった。新郎は数えで20歳。のちの歌人石川啄木である。

       ◇◆

  • 啄木が3週間ばかり過ごした間借り部屋は「啄木新婚の家」として、岩手県盛岡市の中心部にひっそりと残っている。先日、全国の新聞社が集う「新聞大会」が同市で開かれ、会場へ向かう途中、寄り道をした。

〈人みなが家を持つてふかなしみよ/墓に入るごとく/かへりて眠る〉

  • かなった夢、かなわなかった夢。それを分かつものは何だろう。新婚の家でしばし思いにふける。気づけばもう新聞大会が始まる時刻。部屋のあるじをまねて、すっぽかした…なんてことはない。(月1回掲載)
    (2021-11-29 佐賀新聞

 

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