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文豪たちの金銭感覚って? 「令和の文士」の穂村弘さん(歌人)と町田康さん(作家)が語り尽くす!
文豪や作家のお金話を集めたアンソロジー『お金本』(左右社)の刊行を記念し、2019年12月20日、同書にエッセイが収録されている歌人の穂村弘さんと作家の町田康さんのトークイベントが開催されました。トークの模様の一部を採録します。
- 穂村:短歌にはもともと「題詠」というのがあって、自分がそのテーマで作ろうなんてまったく考えたこともないような題をいきなり出されるわけです。
- 町田:個人の思想や感情じゃなくて「歌」という形式があるから、色々当てはめることができると。たとえば和歌だと恋愛の歌の詠み合いしてますけど、あれって群衆を意識したヤラセなんですか?
- 穂村:そうらしいですよ。
- 町田:魂を売る短歌はまあまあ受けるけど、買い付けがあまりない。とすると、音楽は売れるかもとかあるけど、短歌はある意味最初から心が平穏ですよね。
- 穂村:ただ俵さんが爆発的に売れた時、みんなちょっと動揺したと思いますけどね。それまでは隕石が落ちてくるくらいありえないと思ってたけど、目の前に落ちたから、ここにも来る可能性があるって。ちょっと話は逸れますけど、石川啄木も歌人として身を立てるなんてまったく考えてなくて、本当は小説家になりたかった。それでわざとふざけた短歌を作ったら、それが逆に斬新に見えて、短歌で歴史に残っちゃった。でも自分が歴史に残ったことは知らないという。短歌のプロも他ジャンルに比べて非常に大衆的なメンタルを持ってるので、啄木に対して受容的。いまでも詩の世界でポエムって受け入れられないけど、短歌の世界ではかなりポエム的なものは受け入れられるんですね。
(文:福アニー)
(2020-01-08 朝日新聞 Follow好書好日)