〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 啄木は普段着の歌を求めた

短歌の力、可能性探る

  • 日本歌人クラブ創立70周年記念シンポジウム第1弾「短歌は救済になり得るか」は23日、盛岡市のプラザおでってで開かれた。講演やトークセッションを通じ、現代社会の中で短歌がもたらす力や可能性を探った。
  • 同クラブ会長の三枝昻之(さいぐさ たかゆき)さんが「啄木が短歌に求めたもの」と題して基調講演した。三枝さんは石川啄木の短歌について「一般の人がなじみやすい中年の歌を歌ったことがポイント」とし、「啄木は暮らしに根付かせる普段着の歌を求めた。彼の短歌論が今も短歌を支えている」と功績を強調した。
  • トークセッションでは、本題「短歌は救済になり得るか」の問いに、三川博さん(同クラブ東北ブロック長)は「歌作は自分が生きているんだというアイデンティティーとなる。喪失体験からの克服を手助けし、復活力も高めてくれる。救済につながるのではないか」とした。梶原さい子さん(「塔」編集委員)は東日本大震災後の経験を紹介。「歌がぶわっと出てきて、心のつかえがとれた。実感として救済になり得ると思った」と語った。短歌について、千葉聡さん(「かばん」同人)は「世界の中に自分がいることに気づき、世界を見つける手段だと思う。この二つが文学には必要」と訴えた。

(2018-06-26 岩手日報