〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

“自然を壊す人に警鐘を鳴らすキツツキ” 石川啄木

「斜面」【信濃毎日新聞

  • 「しみ渡り」。春が近づくと雪原を歩けるようになる雪国の現象だ。日中ゆるんだ雪は夜再び凍る。その繰り返しが子どもらにうれしい贈り物となる。近年は歩きやすい西洋かんじき「スノーシュー」が普及し、新雪のうちから野山を歩き回る人が多くなった。
  • 先週末“光の春”に誘われて長野市の戸隠森林植物園を訪ねると、雪に埋もれた散策路はスノーシューをはいた人が引きも切らず。どこかで雪が落ち枝がこすれる。樹上からキツツキがコツコツコツ…。おなかの赤いアカゲラがモミの幹をたたいている。
  • 歌人石川啄木盛岡市の実家の寺でいつもこの響きに癒やされた。雅号は漢字の啄木鳥(きつつき)にちなむ。警鐘を鳴らすようにも聞こえるキツツキに自らをなぞらえ、時代の息苦しさ、自然を壊す人の愚かさを作品で訴えようとしたという。
  • 気分爽快のスノートレッキングにも警鐘が鳴り始めている。愛好者が増えて深刻になってきたトイレのマナーだ。ほとんどの野外施設は積雪期に使えない。登山と同じように携帯トイレの持参が必須だ。銀世界を汚すなかれ―と、キツツキの響きが聞こえてくる。

(2017-02-07 信濃毎日新聞記事