みちのく随想 私の「青森時間」
次のためのひととき
- 今、私は函館行きの新幹線に乗っている。新幹線が函館まで開通し、新青森駅で「スーパー白鳥」に乗り換える必要もなくなった。このような時代を、石川啄木は果たして想像できたであろうか−。
- 啄木が初めて北海道へ渡ったのは、満十八歳。青森県の尻内駅で途中下車し、野辺地の浜辺に咲き残っていた赤いハマナスを摘んだ。
- これまで私は渡道した啄木を考える時、青森という地を単なる通過点と考えていた。だが、いろいろなことに思いを巡らせながら青森で過ごしていたことを思うと、とても重要な時間であり、青森こそ重要な地であることにハタと気が着いたのである−。
- この青森という地には、啄木だけでなく渡道していった人々のさまざまな思いが残されている。青森で過ごす時間は、心の整理をしたり、きっぱりと故郷に別れを告げたり、新しい自分になったり、将来への心の準備と希望を抱く時間となっていたであろう。
(第7回岩手日報文学賞随筆賞受賞者・八幡平市 山本玲子)
(2016-10-23 岩手日報)