〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

天才の生涯をたどる評伝『石川啄木』

[ホワイトサローワトル]


評伝「石川啄木」 
 ドナルド・キーンさんが夭折歌人の現代性を浮かび上がらせる

孤独と貧困にあえいだ現実生活を 3 行書きの短歌でうたった石川啄木(1886〜1912年)。日本文学研究者のドナルド・キーンさんが、この夭折(ようせつ)の天才の生涯をたどる評伝『石川啄木』(角地幸男訳、新潮社)を出した。日記や手紙など膨大な資料をもとに、今年生誕130年を迎えた啄木の現代性を浮かび上がらせる。(海老沢類)

  • キーンさんは約70年前に英訳で啄木を知り、初めて日本語で書いた論文の題材にも選んでいる。「深い関心が続きました。すべての歌が面白いとは言えないけれど、いいものを選んだら100かそれ以上。彼の現代的な面をますます感じるようになったのです」
  • 「大体において日本で和歌は美しいもの。啄木は非常に醜いもの、恥ずかしいもの…あらゆるものを書いた。私たちに近い印象がある。読んでびっくりすることがあります」
  • 「矛盾が非常に多い。それも現代人の特徴です」。友人への評や自らの私娼窟通いなどをローマ字で赤裸々につづった『ローマ字日記』にも謎がある。啄木は妻が読めないようにローマ字を使ったと告白し、自分が死んだら日記を焼くように友人に頼んでいた。本心だったのか? キーンさんは北海道・函館の図書館に保管された自筆原稿に何度も目を通した。
  • 「非常にきれいな字で、紙は普通のじゃない(上質なもの)です。彼は発表したかったに違いない。私の想像では彼は 2 回書いた。もともとの日記があって誤りのないようにもう一度、きれいに、いい紙に書いたのです。そういう人に燃やす意志はない」。「彼は本当は小説を一番書きたかった。彼の日記は一種の小説と考えられると思います」
  • 「一時のように若い人が啄木を読んでくれたら、私がやったことには意味があったと思います」

(2016-03-30 産経ニュース)

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