「君は若き女にして、我は若き男に候ひけり」と長い恋文を書いた啄木。
その相手は女を装った男だった……。
店内の展示
- 右の大きい額 石川啄木による「みひかり会員」の詠草添削
- 中央柱の小さい説明ボード 「ようこそ啄木茶房へ」
- その左の額 「平山良太郎」の写真
- 一番左の額 「京都の芸妓「芝地栄美」から、平山良子宛の手紙(宛名は“良子”となっている)
啄木書簡 平山良子宛
◎上段右から二枚目
四十一年十一月十五日
石川啄木から平山良子(良太郎)に送ったはがき
初めての御文おなつかしく拝見仕候。歌稿は別封御返送いたし候、只今のところ、想調共に整へる歌、幼稚浅薄なる歌相半ばし、玉石混淆とも申すべくや、在京の詞友の作にも、少きほどの佳作も有之候。折角御奮励を望み候。
明星百号は一週間程前に発行相成候。多分すでに御覧の御事と存候、小生らにて来る一日より出すべき新雑誌の広告その号に詳しく出しおき候。
小生は都門百丈の黄塵に埋もれて日夕多忙に処し乍ら、心はさびしく暮らし居る男に有之候、寸暇の時には何卒おたより下され度候。写真お恵み下さる由、鶴首して待上候。
目下「東京毎日」に連載中の小説に日ごと日ごと追はれて執筆罷在候場合、略儀乍ら葉書を以てお返事申上候。この頃は芳子様にも御無沙汰、皆様によろしく願上候、次のお文待上候、猶いらぬ事ながら、御婦人にて雅号はいらぬことと存候。早々頓首
◎上段一番右
四十一年十一月十五日
石川啄木から平山良子(良太郎)に送ったはがきの表書き
暖房は火鉢。
炭火が赤くおこり、鉄瓶が微かに揺れる。
(つづく)
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