〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「人といふ人のこころに一人づつ囚人がいてうめくかなしさ」啄木


[セイタカアワダチソウ]
 

サンパウロ新聞
  文協 図書・映画便り

「人といふ人のこころに一人づつ囚人がいてうめくかなしさ」

  • サンパウロにおける日系社会の各団体から「次世代が育たない」ことや「若手日系人が団体活動に参加してくれない」ことで悩んでいると聞くことがある。筆者も、28歳の若手日系人であるが、そう聞くたびに、筆者は石川啄木の冒頭の歌を思い出すものだ。
  • 詩集「一握の砂」に収められているこの歌は、我々人間を各々の心という独房に閉じ込められ、苦しんでうめいている囚人に見立てた歌である。啄木がこのように人を囚人にたとえた理由は、いわずもがなだが、すべての人間が本質的には死へと向かう存在であり、それこそが悲しく、その本質に怯える囚人が一人一人の心にいて、うめいているというのだ。
  • 日系社会の各団体が次世代を育てたいなら、「あいつらは違う」などと言わずに、まずは「友人の輪」をどうつくるかを考えれば良い。石川啄木の歌にそのためのヒントが詰まっている。

(2014-11-19 サンパウロ新聞)

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