〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

〈友がみなわれよりえらく見ゆる日よ/花を買ひ来て/妻としたしむ〉啄木

小社会 高知新聞

  • コラムニストだった青木雨彦さんは、サラリーマンたちが胸の内を詠んだ「会社万葉集」を編んだとき、後書きにこう記した。「それにしてもあの、石川啄木という奴(やつ)はイヤな奴だ」と。
  • 〈はたらけど/はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり/ぢつと手を見る〉。〈友がみなわれよりえらく見ゆる日よ/花を買ひ来て/妻としたしむ〉。この二首くらいサラリーマンの心情に触れる短歌はないとの思いからだ。
  • 天才歌人に先を越されたとはいえ、青木さんはアンソロジーにつつましい心根の歌を集めた。巻頭の一首は〈サラリーの語源を塩と知りしより幾程かすがしく過ごし日日はや〉島田修二。ローマ時代、兵士に塩を支給していたことから「給料」の意味になったという。
  • きのうは勤労感謝の日で、きょうはその振り替え休日。啄木ではないが「ぢつと手を見る」。

(2014-11-24 高知新聞>小社会)

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