〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

よみがえる『悲しき玩具』 平岡敏夫


[カンヒザクラ]


<『復元 啄木新歌集』を読んで>  平岡敏夫
    [近藤典彦 編 2012年1月 桜出版 ]

  • 8年前、近藤氏は『「一握の砂」の研究』(おうふう)を刊行し、その4年後、従来流布されてきた『一握の砂』の初版を復元(朝日文庫『一握の砂』)した。
  • そして、没後100年『復元 啄木新歌集』を刊行、『悲しき玩具』を生まれ変わらせ、幻の歌集『仕事の後』を新たに生誕せしめ、100ページにわたる魅力的な解説を付した。
  • 『悲しき玩具』は友人・土岐哀果の編集によって1912年(明治45)6月に刊行された。
  • 近藤典彦氏はこのノート(「一握の砂以後(四十三年十一月末より」)を復元するにあたり『悲しき玩具』の問題5点をあげ、まず冒頭の次の2首は啄木最後の歌であるので最後にまわした。

   呼吸(いき)すれば、
   胸の中(なか)にて鳴る音あり。
    凩よりもさびしきその音!
 
   眼閉づれど
   心にうかぶ何もなし。
    さびしくもまた眼をあけるかな。

  • 1908年(明治41年)、啄木は歌集「仕事の後」(255首)を春陽堂に売り込んだが売れなかった。この啄木の遺志を先行研究をもふまえながら蘇生せしめた。大逆事件をひき起こす国家強権に対峙しつつ「時代閉塞の現状」を生きた啄木の仕事が、ここに画期的によみがえったのである。

(ひらおか・としお 筑波大学名誉教授・群馬県立女子大学名誉教授)
(2012-04-03 しんぶん赤旗>学問・文化)