啄木の新年
- 明治45年(1912年)の元日、石川啄木は人生最後の年の日記をこう書き出している。<一月一日 今年ほど新年らしい気持ちのしない新年を迎えたことはない。というよりは寧(むし)ろ、新年らしい気持ちになるだけの気力さえない新年だったという方が当たっているかも知れない>
- …虚飾を排し事実を書き残す覚悟からは、すがすがしさのようなものさえ感じられる
- けっして希望を失ってはいなかった。親友土岐善麿への年賀状をこう結んでいる。<どうか今年はいい事が沢山(たくさん)あってくれ―君のためにもそうして僕のためにも>。
- その年の4月13日、啄木は26歳で世を去った。来年は没後100年。来る年はいい事が沢山あれかし―と。
(2011-12-31 北海道新聞>卓上四季)