〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

復興元年つながる心/等身大の思想で希望を紡ぐ

<何となく 今年はよい事あるごとし 元日の朝 晴れて風無し>(石川啄木

  • 新しい年が明けた。仮設住宅で暮らす人がいる。ふるさとから遠く離れ、避難生活を余儀なくされている家族がいる。仕事がなければ、将来の見通しも立たない。…いつもとは違う正月の風景。被災者の窮状に照らせば、啄木の歌の引用は適当ではないのかもしれない。
  • だが、こうも思う。私たちの今は先人たちが「よい事」を希求し、積み重ねてきた到達点としてある。ならばそのバトンを受け継ぎ、孫子の世代に託す責務があるのではないか。
  • 受難を復興のエネルギーに変換するには、なにがしかの希望が要る。肩の力を抜いて「何となく」の期待。確証はないが、それでいい。2012年をそろりそろりと、歩み始める年にしたい。

(2012-01-01 河北新報>社説)