[キンミズヒキ]
煙 一
(P.84)
師も友も知らで責めにき
謎に似る
わが学業のおこたりの因
教室の窓より遁げて
ただ一人
かの城址に寝に行きしかな
<ルビ>因=もと。遁げ=にげ。城址=しろあと。
(P.85)
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
かなしみといはばいふべき
物の味
我の嘗めしはあまりに早かり
<ルビ>不来方=こずかた。
《つぶやき》
「不来方のお城の草に寝ころびて」の歌。
わたしの修学旅行は不来方城だった。あのころ気になる人がいた。その人を含む集団を目の隅で追いながら、わたしは友だちとふたり芝生に寝ころんでいた。光の色や風の匂いがいま浮かんでくる。