〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.48〜49)友よさは

[浪花(ボタン)]


我を愛する歌


(P.48)


   友よさは
   乞食の卑しさ厭ふなかれ
   餓ゑたる時は我も爾りき


   新しきインクのにほひ
   栓抜けば
   餓ゑたる腹に沁むがかなしも


<ルビ>厭ふ=いとふ。爾りき=しかりき。


(P.49)


   かなしきは
   喉のかわきをこらへつつ
   夜寒の夜具にちぢこまる時


   一度でも我に頭を下げさせし
   人みな死ねと
   いのりてしこと


<ルビ>夜寒=よざむ。