我を愛する歌
(P.34)
剽軽の性なりし友の死顔の
青き疲れが
いまも目にあり
気の変る人に仕へて
つくづくと
わが世がいやになりにけるかな
<ルビ>剽軽の性=へうきんのさが。死顔=しにがほ。
(P.35)
龍のごとくむなしき空に躍り出でて
消えゆく煙
見れば飽かなく
こころよき疲れなるかな
息もつかず
仕事をしたる後のこの疲れ
<ルビ>龍=りよう。躍り出でて=をどりいでて。後=のち。
《つぶやき》
「あるある探検隊」(…死語?)ではないが、啄木の歌は「こんなことあるある」と思ってしまうことがよくある。ここでは「気の変る人に仕へて」「こころよき疲れなるかな」に共感する。