[『石川啄木・歌集「一握の砂」発刊百年記念』切手]
石川啄木の新しい偉業 韓国併合批判の歌 5首も
近藤典彦(前国際啄木学会会長)
- ちょうど100年前の1910年8月29日、官報号外の形で韓国併合詔書が公布された。石川啄木は東京朝日新聞に勤めていたので、29日のうちに翌日の新聞を手にして家に帰った。そして「時代閉塞の現状」を書くために新しい原稿用紙に向かった。東京朝日新聞に寄稿したが、強権に真っ向から闘いを挑むこの評論の掲載は不可能と判断された。不可を知らされたのはおそらく9月9日。この夜啄木に歌があふれ出た。
- 合計39首の歌群の第1首目が100年後の今、強い光を浴びている名歌である。
地図の上朝鮮国に黒々と墨をぬりつつ秋風を聞く
明治四十三年の秋わが心ことに真面目になりて悲しも
何となく顔が卑しき邦人の首府の大空を秋の風吹く
……
- 知性とヒューマニズムと勇気に満ちた青年のたった独りの闘いだった。
(2010-08-24 しんぶん赤旗>学問文化)